Wings 1303×3880 mm / oil on canvas / 2014
[ 不可視な心の表現を求めて ]
坂上 義太郎
岸本恵美子は、大学の卒業制作に試行錯誤していた頃、指導教員の助言が契機となり、
「日々の生活の中から、やりたいことが明確になってきました」と輝く瞳の奥から語ってくれた。
そして現身のような像を借りて、“蘇生”をテーマに生命を表現しようと試みる。
以来テレピン油を多くし、絵具を薄くした画面には、
心象風景が心の遠近となり、特有なムーブマンも生まれている。
ところで先の震災は、岸本に人間の生命という問い掛けを再び与えた。
岸本が導き出した答えは、「色々な事があるけれども、前向きに自分ができる事を大切にする」
ということだった。さらに、どんな暗闇も、私たちの心で必ず明るくできると信じている」
と言葉を続ける。私は、この言葉に共感を覚えた。
先日、「最近の制作での傾向は、以前と比べ
軽い色彩と空間を意識しています。特に“Wings”では、
観る人が羽根をつけて、どこまでも飛んでいけそうな
気持ちになってもらいたい」と個展を前にした心境を伝えてくれた。
一見して作品は表層の世界ではなく、無意識と意識の葛藤を経て、
不可視な心の世界を造出しようとする筆遣いが窺える。と、ともに私には、
岸本が時間と空間の交差するところに現れるイメージを表現しているように映る。
そして時空間が、未来に流れると同時に過去にも向かわせてくれ、
朧気なかたちの記憶が浮かんだり、沈んだりするようにも思える。
何れにしても、具象と抽象の間としての波打ち際に対峙している岸本の
軽やかに、静かに余韻が感じられる作品を楽しみに待ちたい。
(BBプラザ美術館 顧問 / 伊丹市立美術館 元館長)
*岸本 恵美子はKIAF(韓国国際アートフェア)に
ギャラリー風より出品します。9/25-29(ソウル・COEX)
岸本 恵美子 画歴
大阪府生まれ
2007年 大阪芸術大学芸術学部美術学科油画コース 卒業
個展
2011年 ギャラリー風(大阪)
2012年 ギャラリー風(大阪)
2013年 ギャラリー風(大阪)
グループ展
2011年 '12 '13 '14
Art Osaka(グランヴィアホテル大阪)
2012年
Asia Hotel art fair (Seoul)
Art Kyoto(京都)
Kobe Art Marce(神戸)
2013年
こうべ市民美術展
若手作家展(ギャラリー風)
現代美術―茨木2013展
高槻アート博覧会×アートバル(JKカフェにて展示)
2014年
若手作家展(ギャラリー風)
現代美術ー茨木展(特集作家として展示/茨木市生涯学習センター)
KIAF (Seoul/COEX)
高槻アート博覧会×アートバル(JKカフェにて展示予定)
受賞
2013年 みなと銀行財団賞 (こうべ市民美術展)
2014年 特別賞 (若手作家展/ギャラリー風)