未生空間Ism ~令和の美~ AFAF2019 , 9/6(金) - 8(日)ホテルオークラ福岡9F

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  そこはかとない「未生空間イズム」宣言  加藤 義夫 ( キュレーター / 美術評論家 )

 日本の伝統的な美意識を継承する現代の画家たち。日本人が感じる「余白の美」の美しさを「未生空間-美の再考」展シリーズとして展開する本展は、福岡、名古屋のアートフェアでも紹介。9月に東京のオリエアートギャラリーでも
開催予定。本展は前回出品作家の永山 裕子さん、渡邉 順子さん、赤松 亜美さんに加え今回、青木 恵美子さん、
森 綾乃さんを紹介するものである。20代、30代、40代、50代の日本人画家における「未生空間」、世代を超えた試みを
ここに紹介しよう。
 作品に主義主張がなければ、あるいはメッセージ性がなければ、絵画は単なる装飾の一要素にほかならない。芸術作品に主義=イズムがなければ、極論的に絵画は壁紙と同様とも考えられる。イズムというほど強烈なものでなくともよいが、芸術にとってある種の主張は必要不可欠の要素だといえよう。イズムとして「未生空間」を考えることの必要性を感じる。20世紀の美術動向には、主義主張というイズムが存在した。例えば、パリを中心に

広がりをみせた芸術運動にフォーヴィスム、キュビスム、シュルレアリスムがあり、戦後はニューヨークを中心として抽象表現主義が世界を席巻した。その後はポップアート、ミニマルアート、コンセプチュアルアートなど、イズムよりアートという言葉が美術史の流れを決定して行った。
しかし、米ソの冷戦構造が崩壊後の1990年代から21世紀にかけて多文化主義となり、マルティカルチュラリズムとしてイズムという言葉が再び浮上してきた。美術史は欧米だけの単一のストーリーでなく、アジア、アフリカ、ラテンアメリカなど複数のストーリー。世界的に美術史を見直す動きが生まれた。ここで多文化主義(マルティカルチュラリズム)が、日本の戦後前衛美術「具体」を世界的に押し上げ再評価する大きな要因をつくったともいえる。シンプルには異文化に相互理解を求め、多様な価値観を認め合うことでもある。そこに争い事の無い世界が生まれることで、世界の安定と平和が約束されることであろう。
 今年は新元号、令和元年となり新しい時代に突入したともいえる。日本史的には令和は万葉集の世界観に源泉を見出し、今回初めて日本の古典から引用したのが令和だと聞く。以前筆者は、「未生空間-美の再考」展に寄せて、こんな文章を書いた。

『豊かな自然を暮らしに活かしてきた日本人は、人と自然が共生して生きることを選び受け入れてきた。自然に寄り添うことで豊かな暮らしを手に入れた。「自然との共生」は、日本の伝統と歴史が生み出した美学である。
「自然」から生まれた「無心」が「余白の美」を生み出したともいえよう。「余白の美」とは「無心」への憧れかもしれない。自我にとらわれず、身を天地自然にゆだねて生きていくことは、人と自然が一体化するとも考えられる。
無の境地に出会う時、そこに美が生まれる。それは日本人の自然観とも結びついている』これらは日本人が持つ世界観のひとつとして、またイズムとして考えられるように思う。
令和元年における、そこはかとない「未生空間イズム」宣言である。

 


 

 


 

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