高須 英輔 展 2012.10.14 (Sun) - 22 (Mon) 会期中無休 11:00 - 18:00 (21,22日は17:00まで)

投稿日:2012-10-14 更新日:

鯱 / 2011 / 流木 , けやき , 金箔 / 10x15x46.5(h)cm

「近・現代の精神史を物語る活動に期待」   加藤 義夫 (キュレーター / 美術評論)

高須英輔と出会ってから、かれこれ四半世紀になる。その出会いから生まれた成果のひとつに高須英輔作品集 「 57の階段彫刻 」 がある。私が編集責任者となりエディトリアル・デザインのアート・ディレクションに携わった。そして2003年の夏に作品集が刊行された。それから、早いもので約10年の歳月が流れた。
作品集「 57の階段彫刻 」を出版してから「階段彫刻」は、さまざまな展開をみせ、新たな分野にその領域を広げていった。 「階段彫刻」は、都市のモニュメントや建築のアートワークとして、これまでない公共空間にも広がりをみせた。
例えば、豊洲ISTビル(東京)や越谷広域斎場慰霊碑(埼玉)などの階段シリーズがある。他方、「東京大学出版会」などの出版物の表紙デザインにも幾度となく採用され、本の装丁という紙媒体でも広がりをみせた。
さらに彫刻という三次元の世界から、二次元的なレリーフの作品も数多く創造され制作された。それらのレリーフ状の作品の中に必ず階段が刻まれ、建築の平面図的な視点と幾何学的な抽象絵画の視点が融合し、彫刻的でありながら絵画的構成要素の強い作品となっている。
また一方、2010年からは、高須のライフワークとして位置づけられる「輾てん轉——TEN TEN DEN——プロジェクト」がはじまった。人々の記憶に残る思い出の建築古材などの部材を生かし、その場と時間を記憶として形作りよみがえさせるプロジェクトだ。
ここにきて高須は、近代主義的な美術としての自己表現や自己存在証明を超越し、自我の表現を超えた彫刻の在り方に突入したといえよう。それは社会とアートの橋渡しともなり、造形表現である従来の彫刻における物質性や空間性よりも、他者の人生という物語の記憶や時間に介在するという試みが始められた。言うならば、他者の個人的な思い出、記憶を紡ぎ出すという共同作業に関わることになった。この記憶の共同作業は、大きくは日本の近代史にも触れることで、日本の歴史を紡ぐ行為と言っても過言ではない。
戦後すぐに生まれた高須氏は、日本の高度経済成長期を生き経済的に豊かさを享受した世代であるが、1990年代初頭のバブル経済崩壊とともに、物の豊かさよりも心の豊かさ探し求めた世代でもある。ここに来て日本の近代史の中で封印され、置き去りにされた人々の暮らしにとって大切なものを、洗い出し拾い上げ、作品という新たな形にする作業に展開。日本中で大きく損なわれ、失われてきた精神的なるものが何であったのかを検証し再考しようとするものだ。
これら人々の個人的でささやかな物語に介在することにより、日本の近代が見え隠れする作品として生まれ変わることになる。かつて個人は家族を作り、家族は村や町を作り、地域社会に生きることにより国を支え作ってきたことを思えば、個人の思い出や物語がまさにリアルな日本の近・現代史と言えるだろう。それは人為的に作られた歴史ではなく、人々の心の歴史がそこには秘められているともいえよう。
最近、高須はこのプロジェクトに一番興味と関心を示し、その社会的重要性と重大さをひしひしと肌で感じてきたようだ。過去を知り未来に生かす方法として、社会とアートをつなぐ「輾てん轉——TEN TEN DEN——プロジェクト」のこれからの展開が大いに期待される。

 


 

< 略 歴 >
1946 神奈川県横浜市生まれ
1970 武蔵野美術大学造形学部洋画科卒業
< 個 展 >
2012 「高須英輔 階段展」 ギャラリー風(大阪)
「高須英輔 輾てん轉」座間神社(神奈川)
2011 「高須英輔 展 -天飛む階梯-」ギャラリー水・土・木(東京)
「高須英輔 「輾てん轉in 京都」スタジオアンビエント(京都)
2010 「高須英輔 展 -記憶-」 アートスペース獏(福岡)
「高須英輔 展 avec le temps …刻と瞬のあいだに」スタジオアンビエント(京都)
「高須英輔 展 記憶それから・・」T-BOX(東京)
「高須英輔 展 記憶」 ギャラリー風 (大阪)
2008 「七福神 展」 ksグリーンギャラリー (東京)
「RANMA -欄間-」 Lighting House (東京)
「記憶のフラグメント」 帝国ホテル絵画堂 (東京)
「高須英輔 展」 ギャラリー風(大阪)
「高須英輔 展」 ギャラリーK(韓国)
2006 「自然と共存プロジェクト展」 (東京)
「木のレリ-フ展」 帝国ホテル絵画堂ウィンドウギャラリー(東京)
「いまだ山麓」 K s Green Gallery(東京)
「-階段レリーフを中心とした-」 ギャラリー風(大阪)

< グループ展・シンポジウム >
2012 ART KYOTO 2012 (京都)
ART OSAKA 2012 (大阪)
2011 「水の刻」ルーフギャラリー (東京)
2010 KIAF Korea International Art Fair (韓国)
2009 「ピュアランドⅡ」 法然院 (京都)
ART DAEGU 2009 出品 (韓国 テグ)
2008 KIAF Korea International Art Fair (韓国)
「ピュアランドⅠ」 法然院 (京都)
「アート・音楽・心の棲家」 アーティストによるトーク 京都国際交流会館
「記憶の輪郭展」 ルーフギャラリー(東京)
堂島ホテルアート大阪2008 (大阪)
2007 KIAF Korea International Art Fair (韓国)
Heyri Asia Project JAPANESE CONTEMPORARY ART FESTIVAL(韓国)
DOHJIMA ART FESTIVAL (大阪)
ヨッチャンの部屋 加藤義夫芸術計画室10周年記念 ヨッチャンの部屋vol.3 (大阪)
SIPA 2007 Seoul International Print,Photo&Edition Works Art Fair (韓国)
TCAF Tokyo Contemporary Art Fair (東京)
2006 「ART in CASO/OSAKA」 (大阪)

-artists, 高須 英輔, exhibition

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